第189話 嫌われまいこの一生

まいこちゃんは言った。
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団ツアーでの打ち上げ会場。
夜の渋谷、街は明るい。
まいこちゃんは言った。
「わたし、初対面の女の人に絶対嫌われるのよね・・・一体なんでなんやろ・・・」
切ない顔、そして今にも泣きそうな声。
華奢な身体を震わせまいこちゃんは言ったんだ。

トラベルスイング楽団のメンバーの男子全員をはべらせて。


(はべ〜)

奇妙礼太郎の膝に手をおき、
ドラムスてっしーに潤んだ視線を送りながら。

そういうところや!


(こういうとこ)

そういうところが鼻につくんや!
鼻にピタ〜とはりついて離れへんのや!
トラベルファンの逆鱗を掴んではなさへんよね、ホンマ。
ガッチリつかんではなさへんよね。
まいこちゃんは率先して男の中に入りすぎやねんて。
だってほら、あちらを見てごらんよ、
あちらのテーブルを見てごらんよ、
女の子が15人くらいで座っているテーブルがあるよね、
今日はそうゆう感じなんだってば。
乾杯してほんのり盛り上がってきてから少しずつ移動がなされる感じなんだってば。
なんで?なんでコッチに座っちゃった?
わかる?いままさにやで?
いままさに嫌われてる真っ最中やで、
すごい速さで、目にも止まらぬ速さで嫌われるている真っ最中やで。


(ファルコンに乗って嫌われ中)

まいこちゃんの実家はマンションの八階なんやって、
中学の時、同じマンションの同じ階に住む同級生の女子とマンションのエレベーターで一緒になったんやて、
その日まいこちゃん黄色のスニーカーはいてたらしいんやけど、
エレベーター乗った瞬間にその同級生、
「私、黄色のスニーカー嫌いなのよね〜」

二階で降りたい!

誰か〜!
誰か乗ってきて〜!
二階で誰か乗ってきて〜!
それか二階で降ろしてくれ〜!
もしくは七階あたりで言うてくれ〜!
エレベーターはまいこちゃんとまいこちゃんの同級生と、すごい空気を乗せて八階までノンストップ。
いつもよりちょっとスピード出てたらしいですからね、
エレベーターも気利かせたんでしょう。
これはウワサなんでなんとも言えないんですが、

瀬戸内寂聴に舌打ちされた事があるらしいです。

彼女、瀬戸内寂聴に舌打ちされた事があるらしいです。
おそらく今いちばん仏に近いばぁさんに舌打ちを。
何したんでしょうね、
まぁ、どうせまた背中がパッカ〜あいた服にハイヒールで満員のライブハウスでも行って足くじいたか何かしてエントランスで男に介抱されてたんでしょう。


(ちっ、クソ女が・・・)


油断してると死んじゃうぞ〜!