第249話 シド&ナンシーは今夜も夢中 (浪速の)

時間は午前零時を回った。
けつむらさん生誕たこ焼きパーティーも佳境を過ぎ、
ゆったりした時間を取り戻したペヨーテ(というバー)にその二人はやってきた。

浪速のシド&ナンシー。


(ナンシーの二の腕すごいな)

ザ・たこさんの歌手安藤さんと桜川春子、
そう、浪速の(シド)安藤、(ナンシー)関である。
正直、安藤さんにたこ焼きをお出しするのは緊張する。
安藤さんと出会ったのは10年ほど前だろうか、
当時彼は大阪のたこ焼き屋の名店でアルバイトをしていた。
しかもベテラン店員だった。
そんな人に、たこ焼き屋で働いていた人に、ボクの焼いたたこ焼きなんて・・・。
しかもたこさんだし。
その僕の緊張を桜川春子は察したのだろう。
「あんちゃん(春子は安藤さんのことをあんちゃんと呼びます)、松井かわいそうやん、焼き場立ちぃな、久しぶりにたこ焼き焼いたりぃな」
安藤さんの目が光ったような気がした。

「でもほら・・・オレは五年間ドリンク担当だったから」


ハイボール、どやっっ)

え?おまえ、ドリンク担当やったん?

五年も?
オッサンやのに?
10年前からオッサンやのに?
なんやねん、めっちゃリラックスやわ、
めっちゃ肩の力抜いてたこ焼きやけるがな。

マスターのよしきくんは安藤さんが大好きだ。
「安藤さん、今度飲みにいこうよ〜」
「魚の美味しい店あるからさ〜」
ボクは知っている。
安藤さんは魚が嫌いなんだ。
たこさんなのに。
安藤SAY(安藤は言った)
「よしきくん、オレ魚ダメなんだ、魚って脂っこいだろ、だから魚ダメなんだ」

(脂っこいからアカンて・・・あんた、ホルモンめっちゃ好きやん・・・)


(肉はいいんだよ!肉は!)

「まぐろダメだろ、はまちもダメだし、サーモンもダメだ・・・」
春子SAY(春子は言った)
「あんちゃん、魚あかんのに、わたしと付き合えるかどうかって時に毎日のようにおくまんきてたなぁ・・・」

※おくまん・・・大阪を中心とする魚居酒屋です。とにかく安くて新鮮なお魚が充実してるので超オススメ☆

どうでもエエわ、
ホンマにどうでもエエ。
安藤さんと桜川春子のなれ初めとかホンマにどうでもエエわ、
セミの一生の次にどうでもエエわ、
つまり世の中で二番目にどうでもエエねん。
ってゆうか、「付き合えるかどうか」とか上から言うてもうてるとこが腹立つわ、
トンカツ丸のくせに腹立つわ。
安藤さんはまだ嫌いな魚を並べている。
「焼いたり、炊いたりしてるのがダメなんだ、ツナなんて最悪だろ・・ひかりものなんか一番ダメだ・・・寿司はまだいける・・・いや、あれだ・・・」

「オイルサーデンは好きだな」

油の王様やん。
オイルって言うてもうてるし。
ブレすぎやねん。
魚やし、ひかりものやし、油まみれやがな。

「けつむら・・・本当はオレが松井のとこで働きたかったんだぁ・・・!!!」