第303話 帰ってきたけつむらさん
夏休み最終日。
うだるような暑さである。
今日は仲間たちと琵琶湖に繰り出す日である。
そしてあの男が帰ってくる日でもあった。
あの男、そう、尻村穴(けつむら あなる) が帰ってきた。
[第303話 帰ってきたけつむらさん]
(けつむらさんの東京いきの顛末はこちらの記事をお読みください。第293話 BEST FRIEND http://d.hatena.ne.jp/matsuiyousuke/20130703)
11時、京都三条大橋に集合した僕らの前に彼は姿をあらわした。
再会の感動もそこそこに僕らは琵琶湖を目指す。
山科で途中下車し、ビールやつまみを買い出す。
けつむらさんのようすがなんだかおかしい。
この日の朝に大阪に帰って来た彼は水着を持って来ていなかったのだ。
「うちも琵琶湖、入りたい」
夏の前半を出稼ぎに費やした彼が夏を取り戻す。
けつむらの夏。
肛門に蜂蜜を塗りたくられた悲しい夏。
辛かったよな。(つらいやで、からいちゃうで)
怖かったよな。
痛かったよな。
けつむらさん、ホームで待ってるから、水着買ってこいよ。
よかったな、けつむらさん、一緒に夏を取り戻そうぜ。
近江舞子(という駅です)行きの列車がホームに到着する。
けつむらさんの夏が今始まろうとしている。
水着が入っている袋を見つめるけつむらさん。
とても嬉しそうだ。
「買えた、買えた」
「安かったんやで」
「やっと夏始めれるわ」
雄弁なけつむらさんがそこにいた。
けつむらさんが嬉しいとボクも嬉しい。
よかったな、けつむらさん。
エエのん買えた?
なんぼしたん?
「安かったで、上下で890円。」
上下・・・?
・・・上もついてんのか?
隠したいとこが増えちゃった感じなのか?
あれか?つながってるタイプなのか?
それともビキニのお兄さんなのか?
身も心もアレなのか?
アレになっちまったのか?
追伸:こいつは全身隠しちゃおうな。