第二話 声のトーン下げて、賢さやや上げて

病院の外で兄圭太郎が泣いていた。
(あかんかったか・・・)
その日の朝からおばあちゃんの容態が急変していた。
「あかん・・かった・・・?」
「死にかけ・・・(涙)」

いやいや、圭太郎くん、言い方!

言い方気になる!
死にかけはアカン!
例えば・・「片足・・あっ、棺桶にねっ!」あかん、あかん、弾んどるがな。
「もうちょい・・」待ち遠しいんかい!あかん!
「ガッツ次第・・・」ないわ!アカンわ!ガッツもうないわ!
ちょっと良い言い方が思いつかへんけどとにかく「死にかけ」はいけないと思うな。

5月22日12:02。大好きなおばあちゃんが死んだ。

ボクは所謂おばあちゃんっ子やった。
オトン、オカン共働きでおばあちゃんがいっつもおった。
小学校にあんま行かれかった時期もばあちゃんは家おったから二人でよう遊んどった。
友達連れてきても酒のつまみ作ってくれたり、
時には一緒に飲んだり。
ホンマにムッチャかわいがられたし、愛された。
27年間フルテンションで愛された思う。
ばあちゃん、ホンマにありがとう、涙が止まらへん。ばあちゃん、ホンマに・・・・

何か聞こえる、
圭太郎が電話ではなしていた。
「はい、マツイケイタロウです、はい、土二つに・・縦にです、はい、浦島太郎の太郎です!はい、新しい風の館、新風館です、はい」

圭太郎くん、ごめんやけど声のトーンを下げて、そして賢さをやや上げてくれへんかな。

なんやねん、「土2つ、縦にです」て横に土2つてどんな字やねん、土 土太郎やん、土が名字で土太郎が名前?
童話?童話の人ですか?
子供のない、おじいさんおばあさんが土で作った人形に魂が宿ったやつ?
最後はおじいさんおばあさん守って溶けてしまうん?
土太郎は心が優しいなぁ、ってか?
ほんで「太郎」はわかるから。
「浦島太郎」出してこんでエエから。
確かに『太郎界』では名士やけど。
『新しい風の館』て!ドラクエみたいやな。
ドラキュラでもいるのかな?
サマトルリアの王子はウロチョロし過ぎやで、
圭太郎くん、お願いやから声のトーン下げて、賢さをやや上げてください。
おばあちゃんの上の差し歯に免じて!