第九話 ボクの悪意

携帯電話の未送信ボックスに、

「壇ノ浦で平家と一緒に滅んだらよかったのに」

っていう呪いの言葉が残されていた。
誰に送信するつもりやったんや、
こんなおぞましい悪意をどこに発信するつもりやったんや。
あいつかあいつかあいつやな。(ウソ、心当たりがあらへん)

ただボクが世の中に対して並々ならぬ憎悪を持っているのは紛れもない事実である。
世が世ならボクはデスピサロになっていたかもしれない。(よかった、世が世でなくて)
そう、ボクの悪意は、ボクの憎悪は駅のトイレのトイレットペーパーを売りつけるあの呪われたシステムにむいている・・・。

ケツくらいタダで拭かせんかい!

困ってる人から小銭をむしりとる、あの態度。
ビジネスチャンスととらえるなよ、この状況を!
だいたい駅でウンコする段階でだいぶのっぴきならない状況やねん、
そこで商魂たくましくすなよ!
すごい商魂やで、
ケイン・コスギみたいな商魂や、
だいぶたくましいな!
隆々やな、筋骨隆々たる商魂やで!
ほんで百円入れたら二個出てくるでしょ、トイレットペーパー。
一個でエエねん!
どんな粘着力のあるウンコやねん、オレのウンコは!
一個で足りるわ!
一個で50円にせえよ!(それでも高いけどな!)
わかった、オマエの態度はわかったわ、
買おやないか、トイレットペーパー買おやないかい。(一個で50円にしてほしい)
そこで、相談なんやけど、

後払いにはさせてもらえへんやろか・・・。

急いでんのよ!とっても!
さっきも言うたけどもこちとらのっぴきならへんのよ!
のっぴきがね、全然なってないの!
(ところで『のっぴき』ってなんやろ?『のっぴき』ってなんなん?なぁなぁ、『のっぴき』ってなんなん?でも今は『のっぴき』がなんなんかを考えてる余裕もないくらいのっぴきならない状況やから!)
ほな何かい、手元に小銭がない場合、
ボクはウンコを漏らさないかんの?
今日はポールスミスのお気に入りのズボンやのに?
東京から親戚が子供連れて遊びにくる日やのに?
お年玉を奮発してとってもなついている姪っ子もくるのに?
「大人になったら洋介兄ちゃんのお嫁さんになる!」って言うてる姪っ子の前でウンコを漏らせってか!

壇ノ浦で平家と一緒に滅んでしまいたい!