第十七話 吉永小百合

昨日家の近くの焼き鳥屋で飲んでいた。
すると兄の圭太郎氏からメールがあった。
焼酎のボトルキープしたあるから飲んでもいいぞとのこと。
ありがたい、ありがたい。
ビール200円やからビールばっかり飲んでたから、
だいぶきつなっとったん。
ほないただくとしよかな。

吉永小百合でキープしてあるから!」

悩んだ。
とっても悩んだ。
言いたくない。
できれば言いたくない。
忘れていた。
昔、長崎行きの飛行機を取るときにボクの当時のカノジョの本名知らないから『ワダアキコ』でチケットをとってしまう、そんな氏だった。
何があっても不思議じゃない。
そんな氏を相手にしているんだった。
何が起きても変じゃない。

「あっ、吉永さゆりかも」

そこじゃない。
問題はそこじゃない。
(なぜなら口に出したときに漢字とひらがなを使い分ける能力を人類はまだ持っていないからね!)
勇気を出した、勇気をふりしぼった。

吉永小百合ですけど、ボトルを・・・

三回ほど聞き返されながらボトルが到着した。
「吉長さゆり」って書いてあった。
飲んだ。
酔っ払いたかった。
早く酔っ払いたかった。
お酒は時に優しく、時に厳しい。
今夜の酒はとっても優しかった。
外では虫が鳴き始めている。
もう夏だ。

追伸:先年まで圭太郎氏の寝ていた部屋でボクは寝ているのですが、枕元には『するめ』って彫ってあります。なぁ、オマエはノイローゼなのか?