第二十五話 大人になったら

ひと頃から比べるとボクも随分丸くなりました。
もう尖りまくってましたもんね、あの頃。
人に「消しゴム貸して」と言ってはシャーペンについてる消しゴムを使いまくってましたからね。
恐れられたもんですよ、
「松井が来たぞ、それ!シャーペンを隠せ!」ってね。
「シャーペンの先の消しゴム真っ黒にされるぞ、それ!シャーペン隠せ!」ってね。
人が買った漫画の帯とか平気で捨てたりしてましたからね。
「あ〜、そうなんや〜、漫画の帯とか大事にするタイプやったんや〜」
修学旅行の写真で地味なヤツがやっとまともに写ってる一枚を買い占めたり、
生理でプール休んでる女子に「なんで見学なん?なぁなぁ、なんで見学なん?」ってしつこく聞いたり、
人気者でも優等生でもなんでもないやつを学級委員に推薦したり・・・。
人を人とも思わない、極悪人・・・。
荒れてました、荒れ果ててました。
人んちの犬に『うんこのすけ』ってゆう名前つけて、
『うんこのすけ!』って呼ばな何も言うこときかへんようにしつけたりもしました。
どうゆう気持ちになります?
かわいい愛犬のこと『うんこのすけ』ってゆう名前で呼ばれて、
自分が『ジョディ!ジョディ・シルバニア!』って呼んでもうんともすんともいわへんのに、
言うても「すん」くらいしかいわへんのに、
ボクに『うんこのすけ!』って呼ばれたらフルテンションで「バウっバウ!」言うようになってたら。
家族で伊豆に行ってる2、3日のあいだに。
伊豆から帰ってきたらそんな変わり果てたうんこのすけになっていたら・・・!!
かわいいジュディ・シルバニアが駄犬、うんこのすけになっていたら・・・!!
悔やんでも悔やみきれないですよね。
ただ、この場合『うんこのすけ』にも非がありますけどね。
だいぶアホです、うんこのすけ。
うんこのすけもうんこのすけやわ、
ものの2、3日で自分がジョディ・シルバニアっていうことを忘れて、
嬉しそうにうんこのすけにまで成り下がって。

そんなボクも随分大人になりましたよね。
「私って○○な人じゃないですか〜?」って言われても、
光の速さで、
「それは知らんけど!」
って言うようなこともなくなりましたし。
「私的には〜」って言われても、
隕石の力強さで、
「私的ってなに?私はって言うて!」
って言うようなこともなくなりましたし。
ボク的には大人になったじゃないですか〜?って感じ?
(「感じ?」って聞かれてもそんなもん感じ方は人それぞれじゃ!とか言わないように)