第四十話 おばあちゃんとクゥ

台風が過ぎ去って太陽が顔を出す。
まだ外は嵐の面影を残している。
こんな夏の午後はおばあちゃんの事を思い出す。
そしておばあちゃんの可愛がっていたクロネコを想う。
クゥはおばあちゃんにとてもよくなついていた。
おばあちゃんがお風呂に入っている時はお風呂の外で待っていたし、
夜寝る時はおばあちゃんの布団の中。
おばあちゃんもクゥが大好きで、
最期の最期までクゥの心配をしていた。
ボクとした最期の会話も、
「クゥちゃんにご飯あげて・・・」
いやいや、おばあちゃん、自分がご飯食えてへんのに、クゥの心配はエエから自分の事だけ考えてや、今は。
クゥは毎日おばあちゃんを探して歩いている。
誰もいない縁側で何を思っているんやろ。
おばあちゃんのヒザは気持ちよかったなぁ。

そんなおばあちゃんとクゥやけど、
一回おばあちゃんがクゥを怒って投げた事がある。
その日、お客さんがうちにきてはって、
昼ご飯を一緒に食べていた。
おばあちゃんはいつもの座椅子に座っている。
クゥはおばあちゃんの隣。
おばあちゃん「この子、クゥちゃんって言うの、とてもお行儀がよくてね、テーブルの上なんかには絶対に上がらないのよ、ねっ、クゥ・・・これ!クゥ!やめなさい!」

アカンわ、クゥ、テーブルの上に乗ってお客さんの焼き魚食べたら。

こんな暑い、夏の午後やった気がする。