第五十話 ダメ、絶対!

ほんとによくない。
絶対にダメだと思う。(ダメ、絶対)
みんながイヤな気持ちになっている。
みんな、怒ってる。
普段とっても大人しい犬も吠えてるし、
カラスも騒ぎ出した。

ゆりえ・ブギーが水着になった。

和歌山の海を守りたいんだ。
きれいな和歌山の海を守りたい。
ゆりえが海ではしゃぐ、
ゆりえの周りから人の姿が消える。
ゆりえが海にもぐる、
魚がお腹から浮かぶ。
ゆりえが海の家に入る、
カレーが売れなくなる。
ゆりえが泳ぐ、
子供が半狂乱で水鉄砲をむける。
ゆりえのすぐ後ろでは青年が水上バイクをふかしている。(いってくれ〜!みんなの総意やから、この海の総意やから!)
ゆりえが海からあがった。

足のないイカがうちあがっていた。

生態系が心配だ。
和歌山の海の生態系が狂ってきている。
鼻毛だって出ている。
花柄のワンピースの水着を着た一頭のゴリラの鼻からはひじきみたいな毛がはみ出ている。
水着に謝ってほしい。
ワンピースの水着に心から謝ってほしい。
鼻毛生やしてごめんなさい、
きれいな花柄の水着やのに鼻毛飛び出してごめんなさい、って。
いや、鼻からだけじゃないんだぞ。
鼻からだけだと思ったら大間違いなんだぞ、
すごい、ケツ毛。
ケツ毛がすごい。

地元の漁業組合の人が集まりだした。
ヘリが空を飛ぶ。
年寄りたちは手をあわせる。
お地蔵さまは微笑んでおられる。
城にはかがり火がたかれた。
捕獲の準備が整う。
よし、麻酔銃よ火を吹け!

ウホッ?