第六十四話 オトンの教訓

オトンが店を始めたばっかりの時、
(うちのお父さんは京都で8流居酒屋をやっています。)
常連客として、よく行ってる店で説教をされたらしい。
その日もいつも通り閉店間際くらいに店に行き、
いつもの調子でウダウダ飲んでいたらしい。
いつもなら調子よく付き合ってくれるママの様子がおかしい。
するとママが突然、静かな口調でこう言ったらしい。

「松井さん、あなたもお店やってるんでしょ、だったら今どうゆう状況かわかるでしょ・・・」

うちの店は看板もしまって後片付けをしている、
松井さん、あなたももうただのお客じゃないでしょ、
同業の身でしょ、
気を遣えないとダメよ・・・。

オトンはハっとして、自分の身を恥じた。
それ以来自分はモチロン、自分の店のスタッフにも社員教育として、
他の店に遊びに行った時こそ、そのお店の空気を読みなさい、
ちゃんと引き際わきまえて遊びなさいと口をすっぱくして言うてるらしい。
っていう話をこないだ懇々と聞かされた。

15分ばかし前に閉店時間をむかえた店で。

ホンマにどの口が言うとんねん!
(自分の身を恥じんかい、色々恥じないかんことがあるから忙しいかもしれへんけども、この場合は・・・わかるよね)
ハッ!としたんちゃうんかい!
57年目にして。
57年目にして心得たんとちゃうんかい!
ホンマ、なんかエラそうに喋ってたけど、
教訓めいたことを。
これこの店の人聞いてたら一斉に突っ込んでくるで。

どの口が言うとんねん!