第106話 高円寺の空
メノウータの夜は更け、ボクは沢田くんのおうちへ。
部屋につくなりコーヒーを淹れてくれたんやけど、
夜更けの3時なわけやし、
寝れへんくなったら困るわけやし、
やや食い気味で辞退。
「洋ちゃん、コーヒ・・・」
「いらんかな!」
沢田くんはちょっぴり寂しそうに二杯コーヒーを飲んで八秒くらいで寝てました。
カフェインとかそうゆう概念はことごとく無視。
ビーノとコーヒーって合うのかな?
(オラ、わかんねえや)
沢田くんのアパートは共同トイレなんやけども、
外部の人に使われへんようにうんこ部屋だけ鍵が閉まってて、
住人たちが鍵を管理するタイプやねん。
入り口に鍵するべきちゃうかな。
トイレ使われへんようにってゆうか、
アパート自体に人が侵入できひんようにするべきちゃうかな。
「あ〜、トイレトイレ〜!」言うて知らんアパートに人ってあんまり入らへんし。
(どこがトイレかわからんし、そもそも共同トイレかどうかもわからんし、ってゆうか最悪トイレくらいやったら使われてもかまへんし。)
ほんでトイレのうんこ部屋なんやけども、
張り紙がしたあんねん。
『汚れにくい構造になってますので、すみませんが水を流してください』
それ、書かへんかったら流さへんやつがおるんか?
しかも『すみませんが』ってだいぶ下手(したて)に出てる。
もっと毅然としていてほしかった。
もっと毅然とした態度で接してほしかった。
うんこは流す。
基本には忠実でありたい。
歯ブラシ忘れたな〜、って言うたら、
「あっ、ボク二個あるんで使っていいですよ!」
お客様用あるんか、助かるなぁおもて歯ブラシ見ると、
2つともまぁまぁ使い古されてるやん・・・
まぁ、いいんですよ、
ボクらの友情ってゆうのは大きなものですし、
そしてその友情の表現の仕方はそれぞれですし、
友情をはかるモノサシもそれぞれですし、
ただ歯ブラシで友情を表現されたんは初めてというか、なんというか、
やや戸惑うかな?
「あっ、青い方使ってくださいね!」
濡れてるほうやん・・・。
さっき使ってたほうやん。
緑の方じゃなくて?
「青い方です!」
沢田くんの気持ちを尊重したい。
ボクは沢田くんの気持ちを尊重する所存であります。
高円寺の空はどこまでも高く、そして青く広がっていました。
ありがとう。