第142話 オーロラのように

フィンランドに行った一組のカップルがいた。
二人はオーロラが見たかった。
本物のオーロラが見たかった。
二人はその夜オーロラを見た。
ヘルシンキの空にオーロラを見た。
新しい人生の門出をオーロラが祝福しているようだった。

「オーロラが現れる時に時々聞こえるぴゅーとかぱちぱちという音
は地球上の人々に話しかけようとしている精霊の声だ。そんな音
が聞こえた時は、必ず静かな、ささやき声で返事をした方がいい。」
1916年ラブラドル半島エスキモー、E.W.ホークス

オーロラは精霊の声なんだ。
カップルはヘルシンキの空からはるか彼方、日本に帰ってきた。
そしてヘルシンキのオーロラを想う。
そして目を閉じ精霊の声にもう一度耳をすます。
男は言った。
それはヘルシンキの精霊の声への返答だったのかもしれない。

「オーロラ綺麗やったなぁ・・・テレビで見るのと同じくらい綺麗やったなぁ」

テレビと同じくらい・・・?
ほなテレビ見とけよ!
〜精霊より〜


(参ったぜ)

おいおい、精霊怒ってんぞ、
カップル謝っとけよ〜

(なんてアホそうな二人や)