第195話 カシワヒロシ

カシワヒロシ、齢二十一。
甲殻類(というバンド)の歌手である。
ただいま絶賛童貞中。
思えば淡路島への行きの車内から様子がおかしかった。
平成生まれをアピールし過ぎて、
30代の女性の反感を買ったと思いきや、
僕らはビートルズの生まれ変わりや、とか言い出して、
エイゾウさんの反感も買っている。
っていうか残念ながらビートルズ、まだ半分ほど生きとるから。(残念ながら?)
おまけにエイゾウさんの車内DJをぶったぎり突然ビーチボーイズをかけてしまい、
またもやエイゾウさんに叱られている。

ビーチボーイズ湾岸線に乗ってからやろ!」

エイゾウさんもだいぶ浮かれているようだ。
総勢24名の浮かれポンチを三台の浮かれハイエースに乗せ、
一路、浮かれ淡路島へ。

一日目から飛ばしまくり(ネイティブの武人と交流を持ったり、シンノスケ君相手にファーストキスを体験したり)のカシワヒロシやけども、
本領を発揮したのは二日目。
初日とは別のビーチで海水浴を決め込んでいたんですが、
カシワヒロシの様子がおかしい。
なんかモジモジしとんねん。
あれ・・・ん・・・?

チンコ勃っとるがな!

チンコが勃っておるがな!
ビーチで半勃ちは絶対あかんから!
とんだ甲殻類やがな!
チンコが甲殻類かい!
ってゆうか、オマエ、チンコでかいな!
あれ?なんかスンマセン!
カシワさんのチンコ、ギターのネックくらいありますやん、
レスポールって呼んでいいっすか!

海が夕暮れてきた。
レスポール先輩は未だエレクチオン
そろそろ移動しなければいけない。
でもみんな海を見てぼんやりビールを飲んだり、
それぞれの夏を過ごしている。
レスポール先輩が口を開いた。

「そろそろ片付けていきましょか!」

チンコが先や!

先にそのチンコをどうにかせい
半勃ちのやつに言われても入ってけえへんわ、
何を言われても入ってけえへんねん!
あっ、すいません、パイセン!
無礼な言葉遣いになってしまいました。

帰り道。
温泉のフードコート。
パイセンのレスポールチョーキングしっぱなし。
フードコートでなんで半勃ちやねん・・・。
30代のアイス食うてるスッピンのおばはんとビール飲んでるバンドマンとビール飲んでるオッサンしかおらんのに何を半勃つことがあるねん。
なんか、すごいわ、わからんけど、すごいわ。

淡路島をあとにする。
楽しかった夏を思い出し車内はしんみりしている。
夕暮れの海。
夜空に咲いた花火。
山道を抜けるとあたり一面の田園風景。
イカ割り。
かき氷。
生ビール。
みんなの笑顔。
思い出は全部ポケットの中。
カシワが目を潤ませている。
思い出を噛みしめた男の顔だ。
カシワが口を開いた。

「Mちゃん、おっぱい触っていいですか?」

耳を疑った。
何でいいと思ったのか。
何でおっぱい触っていいと思ったのか。
そして目を疑った。
カシワのレスポールがギュイ〜ンしている。
ギュイ〜ンとチョーキングしている。
こいつには感傷とかないのだろうか。
ただただチンコ、ひたすらにチンコ。
Mちゃんはもちろん断る。
「そういうのは付き合ってる人とする事やろ?」

「ほな、付き合いましょ。」

クズ。
クソ野郎。
ゲス田ゲス夫。
でも、なんだかオレはこいつが嫌いじゃない。


(チンコ、ギュイ〜ン)