第201話 ゴリラの耳に念仏

「おい、ゴリラ、とりあえず正座せい。」

今日のリーダー(上田くん)はお怒りだ。
ライブを終え楽屋に入るなりゆりえブギーを怒鳴りつける。
確かにひどかった。
今日のゆりえブギーはひどかった。
テンポは狂う、
入りはミスる、
曲順は間違える、
おまけに鼻毛が8センチ程でていた。
さすがにいつもは温厚な上田くんも堪忍袋の尾が切れたようだ。
説教されてるゆりえブギーの態度が腹立つので、
ボクもはいてるサンダルを投げつけた。
「何、わろてんねん!」
「説教聞きながら荷物片付けんのやめい!」
そして投げつけたサンダルをもう一度拾い、

「鼻毛をしまえ!」

それが一番腹立って、腹立って。
なにを人が真剣なハナシしてる時に鼻毛をはみ出させる事があるねん。
ホンマ腹立つゴリラやわ。
こんな大きな声を出す上田くんは久しぶりに見る。
この野良ゴリラへの説教が続く中、突然楽屋のドアが開き上月くんが入ってきた。


(ハワイ在住の日系2世。真珠湾攻撃語り部。)

なんやねん、その浮かれた格好は!

あかん、あかん、
今説教中やねん、
おじいちゃんは出ていってね。
ほんでちんこ触ったらあかん、大人なんやから。
そして、そのアロハシャツやけど『ハワイ』と『ワイキキ』と『トロピカル』って書いてあるやん。
欲張りさんやわ〜。
上月くんも廊下で一部始終を聞いてたらしく説教に参加してくんねんけど、
アカンわ、その恰好では。
その恰好で何言われても入ってけえへんねん。
上田くん怒ってるうちに悲しなってきたんでしょう。

「どんだけ言うたらわかってくれるん?」

それ、中学ン時に先生によう言われたやつやわ〜、
「松井くん、どれだけ言うたらわかってくれるの・・・?」って、
泣きながら言われやつやん。
「どれだけ言うたら授業中にヨイトマケの歌をうたうのやめてくれるの?三番まで。」


(母ちゃんのためならエンヤコラ〜)