第207話 居候

久々に実家に帰った。
仕事終わりで。
市役所に用事があったので休みの前日実家でゆっくりしようと思っての事だ。
リビング(みんなの部屋)でビールを飲んでくつろいでいたら突然、

「たっだいま〜!暑い!マジ、暑い!今日ほんと暑いんですけど〜!」

知らない女の人が帰ってきた。

はじめ、西川さん(同居の兄嫁)気が触れちまったか・・?
と思ったんですが、どうやら別人なんですわ。
目が合った。
ボクより少し年上(?)の女性だ。

「やだ!なに?ようちゃん?帰ってきてたんだ〜、言ってよ〜!びっくりしちゃうじゃん!」

オレが一番ビックリしてるねん!

ちがう、ちがう、誰やねん!
話をしてみると、
この人はオトンの昔の教え子でリサさんというらしい、年齢は30歳。
獣医師の研修ため東京から出てきたらしい。
なるほど、なるほど、
オトンの教え子で、東京から研修で京都にきてるんやね、
ソレはわかったんやけど、

ほんで、なんでここにおんねん。

なんでオマエはこの松井家に「ただいま〜」と元気よく帰ってくんのや、
事情はわかったんやけども、
オレの疑問には答えられてないぞ。

「学生時代からようちゃんけいちゃんの話とか聞いてたからさ、初めて会った気がしないよね〜」

いいえ、はじめまして!

すごい初めまして!
初めて会った気しかしません、
事実初めて会ったわけですし。

「ちょっと、ようちゃん水くさいじゃん、敬語やめてよ〜、なんか壁あるよね〜」

あるで。

壁?
ありますよ、もちろんあります、
ピカピカに磨いてます。
なんやったら敬語で喋ってもらっていいっすか!
この家ではボクの方がパイセンなんで!

「ようちゃん、久々に帰ってきたんでしょ、ふんさん言ってたよ、全然帰ってこないって、ふんさんビックリしちゃうんじゃない?」

だからオレが一番ビックリしとんねん!
自己紹介のあとでなんやねんけど、
言うてなかったしコレ言うわ、
やっぱり言うわ、

やっぱり、オマエ誰やねん!

どう考えてもおかしいやん、
やっぱりおかしいって!
どこで寝てんの?
部屋は今埋まってるはずやんか、
仏間やろ、やっぱし仏間に布団敷いて寝てんねやろ、
頭おかしいって!

「毎晩線香焚いてるよ〜」

それはありがとう。
いや、ちがう、間違えた、ありがとうじゃない、
そうじゃなくて!

居候。
居候で思い出す。
中学の時、松井家にはバングラデシュ人が二人居候してたけど、
あいつら一体なんやったんや、
夫婦でおったんやけどもダンナの方は毎日家おったぞ。
こんな暑い夏やった気がする。
毎日カレーを作ってたあのバングラデシュからの客人は一体なんやったんや。

リサ「冬も来るからね〜!」

とりあえず秋には帰ってくれるんやね。(ホッ)