第213話 賢者をば

オトンが10日間ペルーに行くらしい。
それにあたりまして、
なんて言うんかな、
ざっくり言うてしまうとイキってる。
イキがっている。

「せっかく生まれてきたわけやしな、色んなとこに行かないかんと思うんや」


(うっとおしい)

「帰りの乗り換えロサンゼルスやねん、ちょっとロスで遊んだろかな」


(うっとおしい)

ホンマにイキッとんな、腹の立つ。
乗り換えだけで精一杯やて、
桂乗り換えもあやしいのに、
嵐山行くのもあやしいのに。

「次は地中海あたりかな〜」


(うっとおしい)

松尾でバーベキューしとけ!


(寝んのかい!)

ペルー行くにあたりましてスペイン語の入った電子辞書を買うとるわけですが、
いや、便利なものですな、最近の電子辞書ってのは。
空港からホテルから、ちょっとした買い物などの基本会話が和訳したあるんです。
色々ありますわ。
ん・・・?何これ?
必須用語のところに、

「わたしは佐藤です」


(佐藤やで!)

マジか!
オマエ松井やがな!
いつ使うねん!
「でも、オトンとオカンとは海外旅行よう行ったよな〜」
と圭太郎。(というボクのアホの兄貴)
そうやな、
圭太郎はオカンが生きてる頃よう一緒に海外いっとったもんな、
オレは飛行機に乗りたないから毎回家におったわ。
今考えたらもっといろんなとこいっとくべきやったな・・・
オカンが生きてるうちに・・・

「香港やろ、マカオにシンセン、北京にも行ったなぁ」

全部中国や!

それ全部中国や!
誰か〜、賢いヒト〜!
この家に賢者を、賢者をば!