第257話 愛の話 〜LOVE〜

「春子さんとの結婚も考えてるよ・・・」


(考えてるんだぜ〜♪)

たこの歌手、安藤さんが言った。
ここは大阪、玉造、時間は深夜の一時半。
ボクは嬉しかった。
人間として大きな問題があるとはいえ、
ボクはやっぱり安藤さんをシンガーとして尊敬しているし、
人間としても大好きだ。
桜川春子さんのこともだ。
そんな二人が愛し合っている。
ペヨーテ(というバー)に幸せな風が吹いた。
みんな二人の事が好きなんだ。
オバ(DJ OBBA)が言った。
「二人が結婚したら、ホンマに嬉しいわ!子供とかも見たいなぁ」
安藤さんも頬を赤らめる。
ボクも二人の子供と早く会いたい気持ちでいっぱいだ。
二人の子供だ。
卵から産まれてくるタイプだろう。
本当に楽しみだ。

桜川春子が浮かない顔で呟く。
「わたし、子供育てる自信ないなぁ・・・」
そんなことないよ、
二人の子供なら絶対ステキな子供やし、
二人の子供は絶対に幸せやよ。
なんせ、安藤さんと春子さんの子供やで。
「いや、でも自信ないよ・・・」
そんな春子さんを見て、オバが言った。

「オレが育てよう、二人の子供」


(このオレが!)

ナンデヤネン。

何ヲ言ウトンノヤ。
ゴーヤチャンプルーが何を言うとんのや、
にが瓜は黙っとけ!
そんなん絶対おかしいから!
安藤さんが口を開く。
「オバ・・・なんでそうなる・・・?」
オバの目は本気だ。
「いや、安藤さん、オレが引き取ります・・」
安藤さんが正論だ。(今回は)
「お、オバ、それはちがうだろう、そうゆうわけにもいかないだろう」
二人の目が春子さんに注がれる。
「わたし、自信がない・・・」
オバは力強い。
「大丈夫、なんの心配もいらないから!オレが育てるから!」
安藤さんも男だ。
「いや、でもオバ・・・・

じゃぁ三人で育てよう」



(オレとオマエと春子さんで〜♪)

ダカラ ナンデヤネン。

ソレモ ナンデヤネン。
それもおかしいから!
「間を取って」みたいな感じで言うたけど、
そこちゃうから、
あいだはそこちゃうから、
そんな発想、存在せえへんから!
全然折衷案やないから!
おかしいやん、
混乱するやん、
子供、ものすご混乱するやん、
パパとママと、あと・・・ゴーヤのおじちゃん・・・?
妖怪と怪物とにがうり。
おかしいやん!
妖怪と怪物だけでもおかしいで、
に加えて、沖縄のにがうりやで、
普通の幸せって一体なんなのかね!

最後に愛というものの偉大さを顕著に表すひとつのエピソードを紹介して、
今日のお話を終わりたいと思います。
この日最終的に桜川春子さんが泥酔されまして、
トイレのドアを閉めずにションベンしようとするってゆう最悪な事態が発生したんです。
他のお客様もおられるわけですし、
ボクもバーテンダーのはしくれとしまして、
注意するやないですか、

「おいおいおい!オバハン!汚いねん!ドア閉めてやれ!」

と、丁寧に注意してさしあげたんです。
ほなです、
安藤さんがです、

「オバハンじゃない!」


(おばはんじゃないんだぜ〜♪)

キレよるんです。
「春子さんはオバハンじゃない!そして全然汚くない!」
いやいやいや、

ムッチャおばはんやし、ムッチャ汚いんやし!

桜川春子ですよ、
そんなもん立派なおばはんですよ!
どこに出しても恥ずかしい、立派なおばはんですよ!
それが、ドアをあけてションベンしようとしてるんです、
最悪やん、
そんなん最悪の事態やん、
そんなもんムッチャ汚いですよ!
ゆりえブギーのカーセックスくらいきちゃないですって!
それを、安藤さんったら・・・

愛は与えるものでも与えられるものでもない。
ましてや欲しがったりすものでもない。
愛とはただそこに在る(ある)ものである。


(ホゲ〜〜っっ)