第272話 第一次試験

「明後日、社員試験やねん」

圭太郎(双子の兄)は元々京都の某洋服屋で働いていた。
(語感がモー娘。に似ている服屋さんです。ほんで、AかBかで言うたらBやな〜っていう感じの某洋服屋です)
先月、京都の店を辞めて同じブランド(?)の梅田店に勤めはじめた。
同じ店とはいえ、まずはアルバイトからのスタート。
働き出して1か月、チャンスが巡ってきた。
社員登用試験を受けるらしい。
やはり、京都での8年のキャリア(うち5年は社員として)を認められての試験だろう。
そして、これは絶対に落ちられない試験でもある。
ここで落ちてしまうと8年のキャリアは水泡に帰す。
もっと言うならば京都店の顔に泥をぬることにもなりかねない。
しかし、彼は動じてなどいなかった。
8年のキャリアからくる自信なのか。

「一次試験は面接やねんか」

一次試験は面接である。
特技を聞かれるのだろうか、
接客に対する心構え?
気の遣いかたの例題・・・
面接というものは自分を偽る場所ではない。
何を聞かれてもそれなりに自分なりの返答のできる余裕をもつ、これが肝要ではないだろうか。
彼は一度京都で一次試験の面接を受けているのである程度は質問の予想はつくのであろうし。
落ち着いてかかれば大丈夫である。
「特技聞かれたら言うこと決めてんねんな」
質問に対する返答。
イメージトレーニングは大変大事である。
この調子ならば一次試験は大丈夫であ・・・

「最近、腹話術やってるねん」


(腹話術始めました)

まじか。

腹話術?
なになになに?話変わってないよね?
面接の話だよね?
特技:腹話術ってこと?
それをどう接客に生かすの?
え?ちょっとわかんないんだけど、
すごい動揺してきちゃったんだけど、
え?人形もって?人形に接客させるの?

こんな感じ?
店的にどうなの?

「アイウエオ〜」

すな!

今すな!
ほんで口ムッチャ動いとるがな!
「アイウエオ〜」てなんやねん、
あかん、あかん!
そんな腹話術では絶対落ちるわ!
もっと完璧な腹話術を身につけないと!
明後日やろ、大丈夫か!
明後日までに完璧な腹話術を身につけてやな、
面接にのぞ・・・・

腹話術があかんねん!

完璧な腹話術てなんやねん!
そもそも面接で腹話術があかんねん!

あれ?このひと落ちちゃうかも?


※画像と文章は一切関係がございません。焼肉屋の店主がマンガみたいやったので。