第289話 新人王 其の六 『緒方という名の十字架』

緒方、オレは今までオマエに関わってきた全ての大人に文句がある。

緒方(仮名)が入社して三週間が経つ。
今まで人に対してこんなにむかついた三週間があっただろうか。
そしてこんなに人を想いやった三週間があっただろうか。
四日目で緒方を人間として扱うのをやめた。
チンパンジーとして扱うことにした。
そして二週間をすぎたところで、頭の悪いチンパンジーとして扱うことに決めた。
緒方、おれはオマエをどうにかして頭のいいチンパン・・・いや、普通のチンパンジーにしたい!

緒方、2に7を足しても10にはならへんのや!9にしかならへんのや!


(え??)

これは普通のチンパンジーにもわかる計算や!
オマエは高校を卒業してコンピューターの専門学校へ行ったと言っていたが、
オマエは公文式をはじめるべきやった、
コンピューターなど扱えんでもエエ、一桁の足し算はたのむわ!
そしてそういうことは面接のときに言うとくべきや、
聞かれんでも自分から言うとくべきや!
そして、緒方よ、1から30まで指で数えるのをやめなさい。
九九を使ってくれ!

九九ってとっても便利なのだから!


(え??)

この22年間、オマエは何をしてきたんや?
誰か怒ってくれるやつなどはいなかったのか?
オマエの小学校の先生に対して言いたいことが山ほどある。
なんで見捨てたんや、
チンパンジーやからか?
緒方があまりにもチンパンジーやからか?
不憫でならへんわ、緒方のことがふび・・・

その英語は『ドクター』と読む!


(え??)

中学校の先生にも言わないかんことがある!

ドクターくらい読めろよ!
お医者さんって意味や!
ドクタースランプあられちゃん、ドクターマシリトなどドクターの入っている英単語は世の中にいっぱいやぞ、
オレは見捨てへん、
オマエがどんなにチンパンジーやったとしてもオレはオマエのことを見捨てたりなんかし・・・

ANESSA』アネッサな!


(え??)

ローマ字だろうがよぉ〜

最早それはローマ字だろうがよぉ〜、
ローマ字は読めておくれよぉ〜、
緒方、英語で自己紹介してみてくれ、
「わたしの名前は緒方です」
これを英語で言うてみてくれ。
緒方SAY(緒方は言った)

「え・・・?ディス イズ オガタ・・・?」


(え・・・?)

THIS IS OGATA

オレは生きていく。
十字架を背負って。
緒方という名の十字架を背負って。
(とっても重い)
緒方、来世は頭のいいチンパンジーに生まれてくるんだぜ。
(きっとだぜ)


(二代目パーマン二号襲名)