第309話 夏にタッチする方法 外伝『ひろしとのこと』
〜プロローグ〜
みなさんはひろしという爺さんを覚えているだろうか。
お忘れの方はそのまま忘れておいたほうがいいと思うので今日の記事はスルーしてください。
知らない方も特に知る必要もないのでスルーしてください。
第204話『木村家のじいさん』
http://d.hatena.ne.jp/matsuiyousuke/20120819/1345387905
わたしは徳島の木村家に四度お邪魔している。
四度お邪魔していると言っても、
雨だから取り込んだ布団をもう一度外に出したり、
せっかく泣き止んだ赤子にカレーをかけたりしに行ったわけではなく、
お土産を持って案内をこわれて玄関から「お邪魔」している。
(この記事を読み始めて松井は木村家に四度もなんらかのお邪魔をしに行ったのか、けしからんやつだ、と思った方は日本語の文章に向いていないと思われるので速やかに退出してください。)
四回中、四回。
この数字が何にまつわる数字かというと、
木村家にお邪魔した松井がひろしと喧嘩をした回数である。
10割バッター。
これは往年の武田信玄と上杉謙信に匹敵する仲の悪さである。
いつだって私は行儀がいい。
原因はいつだってひろしだ。
ひろしがいつだって悪い。
ひろしはいつも、わたしの髪の毛を切ろうとする。
(三千世界の〜カラスを殺し〜おのれの髪の毛切りさらす〜〜♪)
その長髪を憎むこと『梅宮辰夫が羽賀研治を憎むかの如し。』である。
きっと若いころに長髪の男にイヤなことでもされたのだろう。
それを目の前のわたしにぶつけているのだ。
なんて小さな爺さんだ。
今回もそうだった。
ひろしSAY(ひろしは言った)
「男が髪を伸ばすなんてことは許せん!」
わたしは説いた。
日本人はもともと髪の毛を伸ばしていたんですよ。
髪の毛を短くしたのは明治維新の時からですから、
その歴史は150年くらいのものでしょう。
その前はみんな髪の毛を長く伸ばしていたんです。
爺さんの好きな神武天皇だってね。
(神武天皇だってね)
ね、爺さん。
分かってくれましたか?
長髪の方が由緒正しいんです、
だから髪n・・・
ジジィが乱心!
ハサミ持ってきた!
本気や!
ジジィ本気や!
おいおい、30歳の暴力をここにきて使う時がきたのか?
おばぁちゃんが止めに入る。
「やめて!おじいちゃん!なんでそんなんになるまで飲んだん!」
ジジィSAY(ジジィは言った)
「楽しいんじゃ!」
え・・・?ジジィ・・・
あれ・・・?なに・・・?この感じ・・・?
なんかキュンとしてしまったやん。
もしかして楽しみにしてくれてたんですか?
ボクが来ることを。
ボクとお酒を飲むことを楽しみにしていてくれたんですか?
爺さんがそっと手を差し出す。
仲直りの握手だ。
爺さん、ボクも大人げなかったです。
次来るときはもう少し髪n・・・
ジジィは力がつえぇなぁ!
相当力こめてんな!
てなわけで我々は和解(?)を果たしたわけですが、
ハサミの収まりどころを見つけようとした爺さん、
なんとキチュウさんの髪の毛を切りました。
これにて、一件落着!