第364話 弱かったら負けます
白球を追いかけていた。
あの頃のボクらは、陽が暮れるまで白球を追いかけていた。
誰かが、なくしてしまったあのボールを、
ボクたちは未だ探しているんだ。
あの放課後、あの公園で。
第364話 弱かったら負けます
試合当日の朝、ボクたちのチームは未だ3人だった。
それで野球をやろうっていうんだ、笑っちまうだろ?
いいさ、笑いたいやつには笑わせておいてやるさ。
ボクは信じているんだ。
ダイアモンドの奇跡ってやつをね。
それじゃぁ、我々『大阪スリーアウツ』のメンバーを紹介しておこうか。
〜大阪スリーアウツ〜
おれがキャプテンの松井、よく知った顔だろ?
中学の新人戦ではサードで四番で出場したんだぜ。
こいつが副キャプテンのKTR、心と顔の病気なんだけど、気のいいやつさ。
こいつは、キャンディ。
大学で心理学を教えてる。
そう、とびっきりのオカマさ!
晴天の神戸私立葺合中学校グラウンド。
あと15分でプレイボール。
大阪スリーアウツのメンバーは、相手チームの落ちこぼれ上月(原かんとく)と十三のチンピラ、かをりブギーの入部により5人となっていた。
5人ではまだ試合にならない。
プレイボールだ。
グラウンドに整列する。
相手チームに頭を下げて二人引き抜く。
頭を下げるのもキャプテンの仕事なのさ。
あと、キャッチャーもお願いする。
チームのためだ、なんだってするさ。
(遅刻中のメンバーが数人いる、はやく来てくれ!)
試合開始、プレイボールだ。
最初は緊張でガチガチのナイン(セブン)たちの身体も徐々に温まっていく。
エラーを恐れるな、
三振したってかまわない、
全力プレイでぶつかれだ!
2回の攻防が終わった。
キュポ〜〜ン!!
色々反省するとこは、あれなんですが、
何が起こったのかを、簡潔に、あまりきたねぇ言葉は使わねぇで説明したいと思います。
まず、三番に『チンポ』ってやつがいてる時点で、なんかイヤ。
プレイがどうとかじゃなくて、なんかイヤ。
もう、チンポがおる時点で三点取られたみたいなもんやんか。
ズボンの中におれ!
(なんちゅうホームや、あと審判のケツ、ムッチャ蹴りたいわ〜)
あと、これも直接の失点ではないんですが、
一番KTRの人なんですが、
毎打席、大ファールを打ちよんねん。
グラウンドのネット越えて毎回同じ家の屋根に当てるねん。
わざとちゃうねん、わざとちゃうから尚腹立つねん。
ほんで毎回結構しっかり怒られてくるねん。
カツオか!
「中島〜、一緒に謝ってくれよ〜」か!
イヤじゃ!
しかもこの人、行きの電車ですごい申し訳なさそうな顔で、
「俺のいるチーム、勝ってしまうで・・・」
どの口が言うとんねん!その臭い口か!
鼻毛も出てるし。
五点取られたみたいなもんやわ。
上月くん(五番原かんとく)なんかゴロ打って、一塁ランナーがセカンドでアウトになって、
上月くんはセーフやのに、なぜかアウトになったランナーと一緒に帰ってきてしまうし。
申し訳なさそうな顔して帰ってきてしまうし。
いやいや、あんたはセーフや!
っていうのを二回するし。
2回の途中で相手チームのスラッガー、QーCHANGの打った弾丸ライナーがピッチャーはた山の足をぶち抜くっていうハプニングが起こるんです。
場内騒然ですよ、
(あれ・・・?これ、ヤバそうだぞ・・・)
ただ、そこはさすがうちのエースです、
スッと立ち上がりこう言うんです。
「くそ・・・あと少しで取れてましたよ」
なに?ボールを?それとも、足が?
そのあと、19点取られちったわけだから、足だな。
よかったな、足取れちゃわなくて!
2回の途中で、絶賛遅刻チューだったメンバーが到着したんです。
オマエか〜〜い!
こんな人が来てほしいわけじゃないですか。
グラウンドに遅れてくるやつは、
こうゆう人がいいわけじゃないですか。
いや、でも今は一人でも多くきてほしいんで。
ただ、この人ある病気を抱えてはりまして。
正面に来たボールを取れないっていう疾患なんですが。
相手チームのキャプテンのトンボが見かねて言うたんです。
「きむらくん、今の取れたんちゃうか〜〜」
ほな、きむらくん、
「球が怖えんだよ!」
なんで来たんや!
野球むいてへんわ!
やとしてもや、球が怖いにしてもや、
何をハキハキと言うてくれとんねん!
球が怖ええだと?
情けねぇこと言ってんじゃねえ!
そして、四回の裏9人目の男がやってきた。
スリーアウツ最後のメンバーだ。
誰やね〜〜ん!
グラウンドに遅れてくるやつは、こうゆう人がいいわけじゃないですか。
名前シャーペンやで。
「新庄!」とか言いたいねんやんか、
それがシャーペンやで。
シャープペンシルやで。
文房具やで。
(勿論あだ名やで、本名やったら、神戸市どうかしてるわ、受理すんな、そんな名前。OK出すな)
ただ、こいつの遅刻の理由ってゆうのが、
道で倒れてたじぃちゃんを病院に連れて行ってたってゆう。
20点くれへん?
このエピソードに20点くれへん?
それでやっとスタートラインなのだし。
1点リードなのだし。
〜続く、のか?〜