第379話 お盆
お盆。
松井家では毎年家族が集まり食事会が開かれる。
減る一方であった松井家に今年は新メンバーが登場した。
兄圭太郎によく似た小さな生き物が登場した。
兄の娘、ふじのだ。
なんだか淋しくなってしまった松井家に一輪の花が咲いたようだ。
わたしが食事会の会場に着いたとき、兄嫁のまいちゃんが烏龍茶を飲んでいたので、
不思議に思い、なぜお酒じゃないのかと聞いてみると、
授乳のためお酒が飲めない、とのことであった。
そうか、お酒当分飲めないのか、可哀想だな・・・
姉が提案する。
「先に搾乳しとくっていうのもひとつの手やよ」
父が提案する。
「手伝うよ、搾乳。」
クサレ外道め。
圭太郎はフグの白子焼きに舌鼓をうっている。
「おいちいなぁ、まるで豆腐やなぁ・・・」
・・・なんでグレード落としたものに例えちゃうんだ?
確かに食感は豆腐に近しい。
その場合、豆腐を白子に例えるのはアリだ。
「この豆腐、白子みたいやなぁ」
白子みたいに美味しい豆腐、見事だ。
豆腐みたいに美味しい白子?
ほな、豆腐を食べといてください。
そういえばこの人、オーロラの美しさを、
「テレビで見たのと同じくらい綺麗やった」
と言うてました。
ほな、テレビで見といてください。
相変わらず忙しい一家だ。
バカは疲れる。
父ふんさんは早くもふじのにデレデレである。
でも大変でしょう、赤ちゃんは。
夜寝てくれるん?
二時間おきに起きて?泣く?
迷惑人間ですね。
お腹空いて泣く、わかります。
オムツが汚れて泣く、わかります。
眠たくて泣く・・・
寝ろや!
眠たければ、眠たいのであれば寝とけよ!
「眠い〜〜、眠いんだよ〜〜!寝たいよ〜〜!はやく寝たいよ〜〜!」
ってか?
そのまま黙って目を閉じていなさい、すぐ眠れることでしょう、
なぜなら眠いのだから!!
ふんさんが口を開く。
「いやいや、おまえらん時なんて、二人分やぞ、ひとり寝た、おもたら、また次が泣くんや・・・何度、おまえらの頭を壁にド〜ン!しよかおもたことか・・・」
・・・やったろ。
貴様、こいつの頭を壁にド〜ン!したろ、
こいつ・・・こんなんになっちまったじゃねえか!