第399話 俺たちのハッピーニューイヤー 其の3

晦日
2014年が終わる。
松井家でも静かに2014年最後の夜が更けていった。
今年は町へ出ずに心穏やかに新年を迎える所存である。
酒は銘酒鯨波
鴨鍋をつつきながら思いを巡らす。
過ぎ行く年に、
来たる、新年に、
父が口を開いた。


「こないだ東京から電話あったんや、夏におじいちゃん亡くならはったやろ、なんかな、遺産相続の話やったんや」




金の話だ。
でも、年末に景気のエエ話やんか。
ほんで、なんぼ程もらえるん?


「ラッキー!と思うやろ、それがな、遺産相続の権利は俺にはないねんな、おじいちゃんの子供たち、つまりお母さん兄弟に発生するんやて、うちの場合、権利者のお母さんは亡くなっていてない、その場合、権利者の子供たち・・・」


つまり、わしらやないかい!



(悦子、圭太郎、洋介)



はよ、言えや、そういう大事なことは!
心穏やかに新年迎えてる場合ちゃうやないか、
ほんで、なんぼやねん、
なんぼ程もらえるねん、
我々、3姉弟で山分けするとし・・・


「放棄しといたから」



・・・え?


「いや、だから、遺産相続放棄する旨、お伝えしといたから」





なんでやねん!





え?え?え?
意味がわからへん、
なんでなん、なんで勝手に放棄してしまうの?
悔しかったか、悔しかったのか!?
「なんやねん、遺産相続て、わしちゃうんかい、しょうもない、放棄!」
ってなもんか?
ビックリするわ!
あと、もうひとつビックリしてることあるからついでに言うんやが、
3月のカレンダーやねんけど、
貴様のカレンダーの3月のところなんやけど、




(4→7 バリ島)


それ、俺の予定や!


なぜか、バリ島に行く、俺の予定や、
というのも、玉造の三谷さん(というラーメン屋の夫妻)がなぜかバリ島旅行をおごってくれたんや、
なんでや?それはおれにもわからへん、
三谷さんはなぜかすごい俺によくしてくれるんや。
毎週三谷さんちで飯食わしてもろてるし、
弁当も作ってくれるし、
エエ店にも連れて行ってくれる。
このご恩は必ず来世返そうと思てる次第や、
今回の人生では無理や、ご恩がたまりすぎてる。
・・・もしかしたら、前世、おれが助けた鶴なのかも。
っていう話をしたが、


ついてくる気かい!



(あらあら・・・)




「それは俺の予定や!」
って去年も誰かに突っ込んだ覚えがあるぞ、
誰やったか忘れたけど。





とにかく、俺はビックリしている。
そして2015年はそこまでやってきていた。