第442話 徳島にて

少しだけ残っていた夏を拾い集めにきた。
徳島県、入田市。
わたしの妻の生まれ育った町である。




(今年は兄圭太郎家族と友人小島夫妻と、あと召使いの木村と。)





(わりかし近い親戚)




(わたしの髪の毛を執拗に切ろうとしてくるじいさん。今年も健在。)




(酔っぱらって日本刀出してきたときは、あ、いよいよやべいかも・・・って思いました)




(・・・・・)




「うひゃ〜〜、つ、爪が〜〜〜!」




(爪が〜〜〜!!)



川遊びの最中、ボートに乗り損なった圭太郎が転倒、爪が1枚とれました。根元から。





(・・・・・・)



なんで、そんなことになるんや。
義父の車で病院へ運ばれる圭太郎。
川遊びをはじめて30分。
この旅、一番の盛り下がりをみせる我々。




(いや、ほら、ケガとかされたら・・・ねえ?)




(いしめです、石目茂です、ええ、目が石でできているんですよ)



思い返せば圭太郎が川遊びを一番楽しみにしていた。
我々はもう1泊するんだけれども、
圭太郎だけ仕事の都合で今日帰らなければならない。
であるからして、朝からタイムテーブルを気にして、イニシアチブをとっていた。
それなのに30分で強制退場。
ボートにも乗れず。

だけれども、圭太郎は偉い。
足を内出血でパンパンに腫らし、
爪が根元から取れている、そんな状況でもニコニコと笑顔を絶やさずにいる。
小さな娘を気づかっての事だろう。
小さな娘が不安がらぬよう、精一杯の強がりを見せているのだ。
父は強い。

…いや、そういえば、中学の時、サッカーをしていて腕を骨折した時も笑っていたし、
(なんで、サッカーやってて腕やねん、そこは足やろ、足を折れよ・・・いや、折るな!どこも折るな!)
中学の時、昇龍拳をして足を骨折した時も笑っていた。
(気持ちが昂ると昇龍拳を出していた中学時代。勉強より大事なことが沢山ありました。)





近いところでは、自転車で転けて顔から血を出した時も笑っていた。




(ドン引きや)



バカは強い。


父は強いっていうか、バカは強い。
こうゆう時、人は言う。
「さすが圭太郎やな、持ってるな〜」
逆なんじゃねぇかって。
何も持ってねぇんじゃねぇかって。
何も持ってねぇからこんなことになっちまうんじゃねぇかって。

圭太郎なんですけれども、
お姉さん指から血がドボドボ出るもんだから、
(生理みたいな事ですかな)
こんなにして病院に運ばれて行ったらしいです。





それ以降の圭太郎の足取りを追ってみたいとおもう。



もう一杯ラーメンを食べたいと言っていた、圭太郎。
執念でラーメンを食べれたもよう。



箸こそ持たれへんかったけど、
驚異の行動力でアンデパンダンへ。
(この日はグラサンズがライブをしていた)




(説明不足)



そしてシックスブリッツ(というバンド)のまもるくんが最近始めた『大丈夫』という店にたどり着いたもよう。
圭太郎が全然大丈夫じゃない事が皮肉だ。
やっぱり、このひとすげえな・・・。





(おめえの方がすげいと思う。)