第296話 拝啓、けつむらさん

拝啓、けつむらさん。
あなたが旅立って一週間になります。
玉造にも暑い夏がきました。
真田山のセミは今年もにぎやかです。
東京の暮らしはどうでしょう。
体調などは崩してはいないでしょうか。
厳しいお仕事、ご自愛くださいませ。
こちらの方はみんな元気にやっています。
たまにみんなで集まってはあなたの話をしています。
そして、あなたの言っていたこんな言葉を思いだしては、あなたを懐かしんでいます。

「やっぱり、ロールケーキが一番なんだよな!つってな!」


(つってな!)

ロールケーキが好きだったあなたの笑顔は仲間たちの最高の酒のつまみです。
朝一番のバイトのロッカールームで大きなロールケーキをほおばるあなたを思い出しては、
あなたのいない夏を少し物足りない思いで過ごしています。
でも大丈夫。
あなたはいつだってわたしたちの心にいてこう言うんですから。

「やっぱり、ロールケーキが一番だニャー!」


(猫さんだぞ〜)

さて、けつむらさん、
少し悲しい話をしなければなりません。
けつむらさんはあの人のことを覚えているでしょう。
そう、KTR先輩のことです。
あのKTR先輩が・・・・なんと言ったらいいのか・・・
すみません、写真を同封いたしますのであなたの目でご確認ください。














動揺されたでしょうか?
本当のことを申しますとわたくしもいささか動揺しております。
少し怒りに似た感情もたたえております。
でも、大丈夫です。
あなたの言っていたこんな言葉を思い出しすと平静でおれるようです。

「本当はロールケーキがいいんだぜ?チュパっっ」


(チュパっっ)

あなたが酒場で甘いものを、
酒場なのにイチゴの乗った甘いものをほおばり、
そして、指についた甘いものをチュパチュパとしている姿を思い出してはほほえましく思っております。
あっ!でもこんなこともありましたね、

「それは、オレのロールケーキだっつってんだろうがよぉぉぉ!!」


(それは・・・)


(オレのロールケーキだろうがよぉぉぉぉ!!!)


いつもは温厚なあなたが、
いつもはあんなにも温厚なあなたが、
いつになく取り乱していましたね。
あのときはわたしもオロオロとしてしまいましたが、
今ではそんなことも懐かしく思います。
(あの、お相手のキチュウとおっしゃる方も悪いかたではないのですけれど、いささか頭の具合があれなのでしょう・・・だってそうでしょう?あなたのロールケーキを食べてしまうなんて!!!)
覚えていますか?
あのときはこのかたの一言で事態を収拾したのですよ。

「ほら、落ち着いて、ボクのフローズンを食べなよ」


(ボクの・・・フローズン・・・)

その時のあなたの顔が忘れられません。
あなたのその時の顔はわたしの宝物となっているんですよ。
(あなたの宝物はわたしなんかじゃなくロールケーキなんでしょうけど!!)

えっ?いいんですか?


(お花をあげます)

少し長くなったようですね。
まだお話ししたいことはたくさんあるのですけれど、
またの機会にしたいと思います。
またこうして、お手紙を書かせていただきます。
これからどんどん暑さも増してくると思います。
どうぞお身体、ご自愛くださいませ。
それではごきげんよう
突然のお手紙、失礼いたしました。

PS:ロールケーキをほどいて食べる癖、治しましょうね。




ロールケーキがある時〜!












ない時〜!













ある時〜!














ない時〜!













ある時〜!














ある時〜!













ある時〜!













ある時〜!














ある時〜!














ある時〜!













ない時っっっっ!