第360話 広島遠征記 其の二

広島は雨だった。
ライブの前日、わたしは単身広島に降り立った。
別に浮かれてなんかいないんじゃけぇ。

広島へ向かうバスの中で情報を仕入れていたので、
スムーズに飲み屋へ向かう。
別に広島に飲みにきたわけじゃないんじゃけぇ、
ウキウキなんてしてないんじゃけぇ。

一軒目〜〜!
(浮かれなんていないんじゃけぇ。)
八丁堀(という町)にあるそらやさんにイン☆
今回は観光地ではなく、地元の酔客が集う店、
つまり、ネイティブ・ヒロシマンとの交流を目的とした旅行でして、
(旅行?)
その趣旨にぴったりのエエ店でした。
絶品の地酒と地魚を(安かった〜〜)堪能しました☆


浮かれてなんかいないんじゃけぇ!



(いないんじゃけぇ!)



二軒目〜〜!
(浮かれてなんかいないんじゃけぇ。)
二軒目は薬研掘(という飲み屋街)のハズレにある直ちゃん。
この直ちゃんで少年フォーク(というバンド)のむらしげくんと合流したのだが、
ここで事件は起きた。

私たちは男に声をかけられた。
50絡みのあまりガラの良くない男であった。
その男はこう言った。
(その男、SAY)
「おれは昔、キャロルやクールズを見てきたんじゃけぇ、にいちゃんたちもバンドやってんのじゃけぇ?」

(見ていた言われても・・・)

「オマエたちはどんなバンドやってんじゃけぇ?」

僕ら違うバンドなんですけど、ざっくり言ったらロックバンドっす。
男の顔つきが変わった。

「てめえらが、ロックバンドじゃぁ?てめえらにロックなんかできるんじゃけぇ?髪のばしてチャラチャラしやがりじゃけぇ!てめえらなんてロックじゃねえじゃあけぇ、ロックはリーゼントでやるもん鮭ぇ!なんてバンドやってる鮭ぇ?!名前教える鮭ぇえええ!」


(鮭ぇえええええええ!!)



むらしげくんの顔があからさまに歪む。
凝り固まった男だ。
リーゼントじゃないとロックじゃない?
ロックは髪形でやるもんじゃねぇんだ!
オレがエレキギターをかき鳴らせばもう、ロックは止まらねえんだよ!
むらしげくんは答えた。
(むらしげ is answer)


「少年フォークってバンドです。」




フォークって言っちまってんじゃねぇか!


広島の雨は冷たい。
そして広島の夜は長い。


※少年フォークはロックバンドです。

※おじさんの方言についての苦情は受け付けてません。